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北京へレディーGO・成田絢子

[北京へレディーGO]〈20〉フェンシング 成田絢子

 五輪切符をつかむには、海外参戦でポイントを獲得し、世界ランキングを上げなければならない。だが、遠征にはお金もかかる。「カウンターアタック」を得意とするフェンシング女子エペの成田絢子(ひろこ、26)=秋田クラブ=は徹底した節約主義者。ほっそりとした秋田美人は、涙ぐましい努力で北京への道を切り開く。

 北国生まれ(秋田県出身)は春が恋しい。大好きな季節がやってきた。緑のにおいを楽しむように、都内の公園を散策。170センチの長身が、軽やかに弾む。海外遠征が多い成田にとっては、貴重なリラックスタイムだ。
 フェンシングは武器とルールの違いによってフルーレ、エペ、サーブルの3種目がある。相手の全身どこを突いても得点となるのがエペ。中世ヨーロッパの決闘のような競技は、肉体とともに繊細な神経も使う。
 相手の出際を狙う“カウンターアタック”が得意。「それをやりたいために、タイミングを計って相手をはめる。そのために頭も使う。だから、はまった時は最高。その駆け引きがたまらない」。そこが魅力であり、難しさだという。
 北京切符は、世界ランキングなどで決まる。それを上げるためには、海外のW杯などに出場してポイントを重ねなければならない。1〜2月はチェコ、イタリア、スペイン、フランスを転戦。今月は22日からルクセンブルクに遠征。5月は中国、オーストラリア、6月にはカナダ、キューバを巡る。
 やりくりは大変だ。日本にいるときは都内の日本フェンシング協会で事務のアルバイト。遠征では節約主義を貫く。航空券は格安チケット。宿泊はユースホステルが中心。移動もほとんど電車か地下鉄。食事は日本から電気式の小さな鍋と米、みそ汁を持参し、徹底的に滞在費を切りつめる。100円ショップで買っていく入浴剤のバスタイムだけが楽しみだ。
 海外での厳しい経験が勉強になった。昨年10月の世界選手権(イタリア)は団体エペ8位。日本女子初の入賞を果たした。8強入りをかけた強豪・韓国戦ではビデオで相手を徹底研究し、作戦がズバリとはまって「分析」の重要性を再確認した。12月のアジア大会(ドーハ)では団体銅メダルで日本の2大会ぶり表彰台に貢献した。
 所属は秋田クラブ。東京に身を置いていても、郷土意識は強い。競技の原点となった父も、厳しく温かい目で見ていてくれる。「秋田で応援してくれている人たちに恩返ししたい。北京に行くことができれば、それが両親への最大の親孝行ですね」。最後に「スポンサー募集中」と付け加えた。

 ◆成田絢子(なりた・ひろこ)
▽生まれ 1981年1月16日、秋田県合川町(現・北秋田市)。26歳。
▽サイズ 170センチ、58キロ。
▽学歴 合川中→聖霊女短大付高→立命大文学部卒。
▽競技 10歳から合川町少年団で指導者だった父・政志さん(60)に教わった。
▽主な戦績 高3でインターハイ個人4位。大学では世界ジュニア個人16位、団体8位。2004、05年全日本選手権準優勝。昨年はアジア大会団体3位、世界選手権団体8位。
▽趣味 爪を彩ること。最近は、試合の時にエンジ色を塗る。
▽好きな食べ物 ニラ玉、みそ汁。
▽好きな曲 バンプ・オブ・チキン「ダイヤモンド」、スピッツ「楓」など。
▽休日 主に映画観賞。ジョニー・デップの大ファン。
▽家族 両親と兄、姉。

 ◆ロングヘアが美しかった 【カメラマンの視点】「レンズを向けた瞬間、目の輝きがふっと柔らかさを帯びる。某電機メーカーのモデルを務めた経験があるだけに、カメラの前での振る舞いは堂々としたもの。撮影の合間に、1年ほど前に撮影したという両親との写真を見せてもらった。ショートカット姿もよく似合っていたが、今は髪が伸びて女性らしさが増した。日本フェンシング界の救世主となる可能性を十分に秘めている」(スポーツ報知)