車いすで剣さばきに力 城陽の男性、夢の北京パラリンピックへ
2008年9月開催の北京パラリンピックを目指して、車いすの男性が京都府大山崎町体育館でフェンシングの練習に励んでいる。出場できなかったアテネパラリンピックの悔しさをバネに「周囲の協力に報いたい」と剣さばきに一層の力を込める。
会社員安井一彦さん(38)=城陽市長池=は、16歳のとき、オートバイのレーサーに憧(あこが)れ、バイク免許を取った。だが1年後、滋賀県の山奥でスリップ事故。脊椎(せきつい)を損傷し、車いすの生活が始まった。
フェンシングに出会ったのは33歳。当時通っていた京都市左京区の障害者スポーツセンターで、プールの監視員から声を掛けられた。車いすを固定して、近距離での激しい剣の突き合い。「かつてオートバイで感じた思いを取り戻せる」。日本ではあまり普及しておらず、世界選手権やパラリンピックといった大きな舞台が見えた。
04年3月、アテネパラリンピック出場をかけてスペインで開かれた世界選手権に臨んだ。だが、世界ランキングは25位に終わり、出場枠の上位20人に入れなかった。「もっと強くなりたい」。アテネ後、大山崎町体育館で活動する「京都フューチャーフェンシングクラブ」の練習に参加した。相手は、現役の高校生や大学生。意地を捨て、年の離れた若い人たちから技術を学んだ。
「こんなに何かを成し遂げたいと思ったのは初めて」と北京への思いは強い。だが、競技人口も少なく、練習場所や相手を探すのは、今でも一苦労。それだけに「ここまで来れたのは、自分だけの力じゃない」と安井さん。「まわりに無理を言ってフェンシングができている。協力してくれるみんなに報いたい」と、パラリンピック出場に情熱を傾ける。
(記事は1/4京都新聞より)