フェンシング世界選手権は、11月4日より、フランス・パリで開幕する。
なお、試合結果は時差の関係上、翌日の記事に書くことになる。
世界フェンシング「金」へ(京都新聞)
フェンシングの世界選手権に出場する太田雄貴選手を足元から支える坂尻さん(京都市上京区) 軽快なフットワークの秘密は、足の裏にあった。パリで4日開幕したフェンシング世界選手権に出場する北京五輪銀メダリストの太田雄貴選手(24)=森永製菓、大津市出身、同志社大卒=を、京都の職人技が支えている。義肢装具製作技能士の坂尻憲治さん(34)=京都市上京区=が、繊細な感覚に対応して最大限に力を発揮できるシューズのインソール(中敷き)を仕上げ、金メダル獲得を後押しする。
坂尻さんは高校を卒業後、「ものづくりで一流になりたい」と義肢装具関連会社に就職した。入社4年目からインソール作りに専念して腕を磨き、現在は独立して市内に工房を構える。顧客は、脚の悩みを抱える人のほか、プロ野球やJリーグのトップ選手、モデルや俳優と幅広く、2万足以上を手掛けた。「足の裏には全体重がかかり、少し傾くだけで体のバランスが大きく崩れる。インソールが自然体に戻す支えとなり、故障の予防にもつながる」という。
太田選手のインソールは2008年春から作っている。土踏まずの高さやかかとの傾きなどを精密に測定し、フォームも念入りにチェックする。こうしたデータを基に足型を削り、加工していく。フェンシングは一瞬の動きが勝負を分けるだけに、太田選手のこだわりは強く、要望に応じて0・5ミリほどの微妙な調整を施して仕上げる。
愛用する太田選手は「力の伝わり方がスムーズになり、パフォーマンスが向上した」と効果を実感する。北京五輪後の年賀状に「おかげでメダルが取れました」と感謝をつづったほどだ。
今回は、軽量化などの改良を加えたインソールで世界の頂点を狙う。出場する7日のフルーレ競技に向けて、太田選手は「五輪後の目標だった世界選手権でも自分らしくプレーしたい」と意気込む。坂尻さんは「『勝ちたい』という彼の強い思いに応えた。少しでも支えになればうれしい」と、世界一の吉報を待つ。