名門フェンシング校が55年の歴史に幕 コロナ禍で打撃
小学生を指導する飯田雅也さん(奥)=2020年7月21日、東京都目黒区
東京・自由が丘にある東京フェンシングスクール(TFS)が今秋、55年の歴史に幕を下ろす。1964年東京五輪フェンシング日本代表の監督が創設。五輪選手が輩出し、幼児向けの受験指導でも評判を呼んだが、新型コロナウイルスの影響で苦渋の決断となった。代表の飯田雅也さん(68)は「とらえどころのない相手とは戦えなかった」と残念がる。
飯田さんの父で、東京五輪で男子団体を4位に導いた雄久さん(故人)がTFSを創設したのは東京五輪翌年の65年。当時の日本は、大学のフェンシング部が強化の中心で、子どもの頃から指導できる民間のフェンシングクラブをつくるのが雄久さんの念願だった。賛同した自由が丘の地主が土地を提供し、校舎も建設。88年ソウル五輪代表の桐谷乃宇奈さんらが輩出し、現在は小学生から大人まで約70人が通う。 受験指導の幼児教室としての顔も持つ。同様にフェンシング選手だった飯田さんの母、實枝子さん(95)が71年から、経営を助けるため、幼児向けの体操教室を併設。当時は「赤ちゃん」扱いだった2歳児にも体系立った指導を行うことが評判を呼び、一時は1千人以上が通った。受験指導にも力を入れた。 今年3月、新型コロナの感染拡大を受けて4、5月の休業を決めた。授業料は全額返金。資金繰りに奔走したが、5月上旬に閉校を決心した。「お金のこと以上に、いつまでこの状況が続くかわからない不安が大きかった」と飯田さんは話す。(朝日)