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厳しい就活に奮闘中 フェンシングで五輪目指す大橋里衣選手

厳しい就活に奮闘中 フェンシングで五輪目指す大橋里衣選手

 韓国・仁川で十九日に始まるアジア競技大会のフェンシング競技に、海津市出身の大橋里衣さん(23)が出場する。現在、女子エペ種目の国内ランキング二位で、二年後のリオデジャネイロ五輪出場も期待されるトップ級選手。だが、マイナー競技ゆえの困難とも闘っている。その悩みとは?

 インターネットのグーグルで「大橋里衣」と検索すると、真っ先に出るのが大橋さんの個人情報に関するファイルだ。出身地や生年月日、学歴などが記されており、「個人情報の流出か?」と思わず勘違いしてしまう。

 実はこれ、就職を希望する選手のために日本オリンピック委員会(JOC)が作った企業向けのエントリーシート。自己PR欄には「練習ができる環境を与えてくれる企業を探しています」とあり、大橋さんは競技と同時に就職活動をしているのだ。

 同志社大を昨春卒業し、羽島北高校(岐阜市)で保健体育の非常勤講師になった。だが、競技者として第一線に立ち続けるには、両立は難しいと判断。練習環境の整った東京へ出る決心をし、一年で職を辞した。

 国立スポーツ科学センター(東京都北区)が現在の活動拠点。近くにアパートを借りて週六日を練習に費やす。「コーチや練習相手にも恵まれ、環境はとてもいい」と話す。ただ、表情がさえないのは、遠征費や道具代などで年間二百〜三百万円かかる競技費用を全て、両親に負担してもらっている後ろめたさからだ。

 「同世代の友達はみんな働いているのに、自分はまだ親のすねをかじっている。この選択が果たして正しかったのかと悩むこともある」と打ち明ける。

 景気の悪化で企業スポーツが下火となり、トップ級選手と言えど支援企業が見つからないケースはざら。「フェンシングはマイナー競技なので、特にスポンサー探しが難しい」と大橋さん。

 エントリーシートに書かれた就職希望条件は「どんな仕事でも取り組みます」。ただし勤務日数は「月に三〜四回」とも。

 「企業が雇うには厳しい条件だなと自分でも思う。でも、条件を緩めるとフェンシングに費やす時間が減るだけなので、そこだけは譲れません」

 二〇〇八年北京五輪のフェンシング男子フルーレで銀メダルを取った後、就職が決まった太田雄貴選手(森永製菓)の例もある。大橋さんは「自分も良い成績を残して企業にアピールするしかない」と話す。間近に迫ったアジア競技大会は、格好の舞台になる。
 (平井剛)

 <大橋里衣(おおはし・りえ)> 1991年1月、海津市南濃町生まれ。大垣南高校でフェンシングを始める。同志社大4年時に全日本学生個人選手権大会で優勝、昨年6月の全日本個人選手権大会で準優勝した。現在、女子エペ種目の国内ランキング2位。岐阜クラブ所属。(中日新聞)